「塗装工の給料って実際どのくらいなんだろう」——求人サイトでは幅があり、独立で稼いでいる人の話も聞く一方で、「きつい割に安い」という声も目にする。数字がばらついていて、実態がつかみにくい職種のひとつです。この記事では、感覚や媒体ごとにばらついた数字ではなく、厚生労働省の公的統計をもとに、建築塗装工の平均年収・年代別の傾向・独立の実態を整理します。有効求人倍率5.43(令和6年度ハローワーク求人統計)という採用の売り手市場の数字も含め、自分の立ち位置を確認するための材料として使ってください。
建築塗装工の平均年収は約498万円
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)が令和7年賃金構造基本統計調査をもとに集計したデータによると、建築塗装工の平均年収は約497.7万円(平均年齢41.6歳)です。
「塗装工」と検索すると自動車板金塗装工や船舶塗装など複数の職種が表示されることがありますが、この記事で扱う公的統計の数値はjob tagの職種区分「建築塗装工」のデータです。自動車板金塗装は統計上の別区分に分類されています。なお、job tagの注記にあるとおり、職種統計は「対応する職業分類の統計で、必ずしも当該職種のみを表さない」場合があります。
給与所得者全体の平均は約478万円(国税庁「令和6年分民間給与実態統計調査」)であり、建築塗装工の約498万円はこれを上回る水準です。ただし両者は対象労働者・事業所範囲が異なるため、厳密な職種比較ではありません。「塗装は安い仕事」と一概に言い切れる数字ではありませんが、参考値として位置づけてください。
ただし重要な前提があります。賃金構造基本統計調査は主に常用労働者10人以上規模の事業所を中心とした集計(job tag掲載値のベース)であり、独立した一人親方や自営の塗装工は含まれません。外壁塗装をはじめ塗装業は独立・個人事業化が多い職種であり、この統計はその層を映していません。就業者数は約232,980人(令和2年国勢調査)と建設職種の中でも規模が大きく、建築・橋梁・道路・工場設備など対象範囲が広いのが特徴です。
求人賃金の目安として、ハローワーク求人統計データ(令和6年度)では月額27.9万円。時間当たり賃金は2,317円(一般労働者・令和7年賃金構造基本統計調査ベース)という数値が示されています。
次から、平均の「動き方」を分解していきます。
年代でどう変わるか
塗装工の年収は年代とともに上昇し、40代前半でピークに近づく傾向があります。次の図と表は複数の求人情報・各種調査をもとにした編集部の目安であり、公的統計の年代別確定値ではありません。
| 年代 | 年収の目安(求人・各種調査をもとにした目安) |
|---|---|
| 20代前半 | 約280万〜340万円 |
| 20代後半 | 約360万〜420万円 |
| 30代前半 | 約400万〜470万円 |
| 30代後半 | 約450万〜530万円 |
| 40代前半 | 約490万〜560万円 |
| 40代後半〜50代前半 | 約460万〜550万円(ピーク後横ばい〜やや下降) |
この目安は求人・各種調査をもとにした参考値であり、勤務先・地域・資格・業態によって大きく上下します。経験年数とともに評価が上がりやすい一方で、塗装技能士など資格の取得や役割の変化が止まると、伸びも鈍化しやすい傾向があります。
配管工や大工と同様に独立・一人親方への道が開かれている職種ですが、雇用塗装工の年代別推移と独立後の収入は別の話です。独立の実態は後述します。他職種との比較として、配管工の年収・大工の年収・電気工事士の年収も参考にしてください。
独立・一人親方で収入を上げる道
建築塗装工は独立・一人親方として外壁塗装や屋根塗装を請け負う事業者が多い職種です。自営の収入は賃金構造基本統計調査の対象外であることを前提に整理します。
独立のメリット
外壁塗装は一般住宅からマンション、工場設備まで案件が多く、元請けとして受注できれば単価を自分で設定できます。雇われ職人と比べて単価が上がるケースがある一方で、施主への営業力・見積もり・施工管理を自分で担う必要があります。
独立した塗装工の収入は、受注量と単価次第で大きく変わります。年収500万〜700万円前後の水準も見られますが(求人・業界の目安)、仕事量が確保できない時期の収入は大きく落ちます。閑散期(冬・梅雨)の収入減は独立後に特に顕在化します。
独立のデメリット・リスク
- 健康保険・国民年金を全額自己負担(一人親方労災保険の特別加入も検討が必要)
- 材料費・道具・足場費用などの経費が先行して出る
- 受注が途切れた月の収入はゼロになりえる
- 施主対応・クレーム処理・請求業務など非技術業務の負担が増える
「独立=高収入」と短絡するのは危険で、受注を安定的に取れる人脈・営業力があるかどうかが先決です。雇用塗装工として経験と信頼を積んでから独立する段階的なルートも事例としてみられます。
塗装技能士の資格と収入への影響
塗装に関する国家技能検定として「塗装技能士」(厚生労働省認定)があり、1〜3級の段階があります。1級の受験要件は代表的なもので7年以上の実務経験(または2級取得後2年以上、または3級取得後4年以上)です。
公的統計で資格種別ごとの年収区分はないため、統計上の厳密な差は確認できません。求人・実務上の目安として、1級塗装技能士の取得で月5,000〜1万円程度の手当を設ける会社の例が見られます(統計上の確定値ではなく目安)。また、建設業許可申請において「主任技術者」の要件として塗装工事業の1・2級塗装技能士(2級は合格後の実務経験要件あり)が認められており、独立して法人化する際に評価される場面があります。
施工管理側への転身を希望するなら、1級・2級建築施工管理技士の取得で対応できる工事の範囲が広がります。施工管理職の年収については施工管理の年収はいくら?を参考にしてください。
季節変動と作業環境の注意点
繁忙期と閑散期
外壁塗装・屋根塗装は天候の影響を受けやすく、季節変動が大きい職種です。
- 繁忙期: 春(3〜5月)・秋(9〜11月)。気温が安定し塗料の乾燥条件が整う時期に案件が集中する傾向
- 閑散期: 冬(12〜2月)・梅雨期(6月前後)。降雨・低温で施工が制約され、受注が減りやすい
雇用労働者の場合、閑散期も固定給が保証される会社が多いですが、繁忙期の残業が多く年間を通じた拘束時間が長くなるケースもあります。独立・出来高制では閑散期の収入減が直接手取りに響きます。
作業環境のリスク
高所作業と有機溶剤の取り扱いは、塗装工の職場環境における主なリスクです。
- 高所作業: 足場を組んで外壁・屋根・橋梁などを塗装する作業は高所作業に該当するケースが多い。転落リスクに対して高所作業では墜落制止用器具の使用が定められています(作業状況により適用)
- 有機溶剤: 溶剤系塗料を扱う現場では、有機溶剤の種類・作業環境・関係規則の適用条件に応じて保護具の使用が定められている。適切な換気管理が求められる屋内塗装も多い
- 高所作業手当・危険作業手当: 企業によっては高所や密閉空間での作業に対して手当を設けている場合がありますが(求人上の目安)、全企業共通の制度ではありません
「きつい」という声の背景にはこの環境負荷があります。一方で「技術が身につく」「仕上がりが目に見える達成感がある」という声も、公開されている口コミやSNSでは見られます。
年収を上げる現実的な選択肢
平均や相場が分かったうえで、どう上げるかを整理します。
上位資格を取る
1級塗装技能士の取得は技術力の証明として評価されやすく、資格手当の支給や転職時の交渉力につながりやすいです。さらに、建築施工管理技士(1級・2級)を取得して施工管理・現場監督へ移行すると、給与レンジが変わりやすくなります。
待遇の良い会社へ移る
同じスキルでも、会社によって給与・賞与・残業代・休日数が大きく異なります。資格と実績のある塗装工は転職市場でも評価されやすく、会社を変えることで条件が改善する場合があります。ただし転職で必ず年収が上がるわけではなく、希望条件に合う求人があるかや交渉力・タイミングによって変わります。
独立する
技術と人脈が十分に育った段階で独立・一人親方になると、受注量・単価次第で雇用時より高い収入を得られる場合があります。ただし前述のとおり自営は収入変動が大きく、統計上の平均には含まれません。独立前に「安定した受注先が確保できるか」「運転資金は十分か」を冷静に確認することが重要です。
転職先を探す方法は、ハローワーク・求人専門サイト・建設特化の転職エージェントなど複数あります。費用や得意分野が異なるため、自分の状況に合った方法を組み合わせるのが現実的です。
まとめ
- 建築塗装工の平均年収は約497.7万円(厚労省 job tag・令和7年賃金構造基本統計調査ベース・平均年齢41.6歳)で、給与所得者全体の平均(約478万円・国税庁「令和6年分民間給与実態統計調査」)を上回る水準。ただし対象労働者・事業所範囲が異なるため厳密な職種比較ではない
- この統計は雇用労働者ベースのため、独立した一人親方や自営の塗装工は含まれない。独立が多い職種であることを踏まえると、「平均約498万円」が塗装工全体を代表する数字ではない点に注意
- 年代では20代前半から40代前半にかけて上昇し、40代後半以降は横ばい〜緩やかに推移する傾向。年代別の具体的な金額は目安であり、統計の確定値ではない
- 春・秋に繁忙、冬・梅雨に閑散という季節変動が大きい。高所・有機溶剤など作業環境のリスクも踏まえたうえで待遇を見る必要がある
- 年収を上げる現実的な道は、塗装技能士・施工管理技士などの資格取得、待遇の良い会社への転職、独立の3軸。独立は収入が上がる場合がある一方、受注変動・経費・社会保険の自己負担というリスクも増える
よくある質問
Q. 塗装工の平均年収はいくらですか?
A. 厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)が令和7年賃金構造基本統計調査をもとに集計したデータでは、建築塗装工の平均年収は約497.7万円(平均年齢41.6歳)です。給与所得者全体の平均(国税庁「令和6年分民間給与実態統計調査」で約478万円)を上回る水準です。ただし、この統計は雇用労働者ベースのため、独立した一人親方や自営の塗装工は含まれません。年代・資格・経験・企業規模・地域によって幅が大きく、平均値だけで判断はできません。
Q. 塗装工は独立すると年収が上がりますか?
A. 独立・一人親方として外壁塗装などを元請けで請け負えば、雇用時より高い収入を得られる場合があります。ただし自営の収入は統計に含まれておらず、受注量・単価・経費によって大きく変動します。仕事が取れる人脈・資金繰り・社会保険の全額自己負担なども独立に伴うリスクです。収入が雇用時を上回るかどうかは個人差が大きく、一概に「独立=高収入」とは言えません。
Q. 塗装工の年収は年代とともに上がりますか?
A. 求人・各種調査をもとにした目安として、20代前半でおおむね280万〜340万円、30代前半で400万〜470万円、40代前半で490万〜560万円とピークに近づき、その後は緩やかに推移する傾向です。ただし年代別の金額は一次照合済みの公的統計の確定値ではなく目安であり、勤務先・地域・資格によって幅があります。
Q. 塗装工の給料が低いと感じたらどうすればいいですか?
A. 主な選択肢は、塗装技能士などの上位資格の取得による手当・評価アップ、建築施工管理技士の取得による管理側へのシフト、待遇の良い会社への転職、独立(一人親方)です。転職で必ず年収が上がるわけではなく、希望条件に合う求人があるかや交渉力によって変わります。
出典:厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」(建築塗装工の平均年収約497.7万円・平均年齢41.6歳・時間当たり賃金2,317円は令和7年賃金構造基本統計調査をもとに集計・2026年3月公表。就業者数約232,980人は令和2年国勢調査ベース。有効求人倍率5.43および求人賃金月額27.9万円はハローワーク求人統計データ 令和6年度ベース)、国税庁「令和6年分民間給与実態統計調査」(給与所得者全体の平均約478万円)、令和2年国勢調査(就業者数)。年代別・資格別・独立後の年収は複数の求人情報・各種調査をもとにした編集部の目安であり、統計上の確定値ではありません。数値は調査年により変動します。最新の値は各公式統計をご確認ください。
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