電気工事士を続けるか、これから目指すか迷うとき、いちばん気になるのは「この先も食べていけるのか」です。人手不足だから安泰という声もあれば、AIや省人化で危ういという声もある。この記事では、感覚ではなく経済産業省や厚生労働省などの公的データをもとに、需要の将来性・高齢化・2024年問題を読み解きます。先に言える見立ては、需要面の土台は底堅い一方、安泰かどうかは「資格と経験をどこまで積み上げるか」で分かれる、ということです。
需要の将来性:人手不足は構造的
電気工事士の需要を語るうえで外せないのが、有資格者の不足です。経済産業省の試算(産業構造審議会の電力安全に関する検討資料)では、2045年時点で第一種電気工事士は想定需要約16.5万人に対し、供給が約14.1万人にとどまり、2万人規模の不足が見込まれています。第二種電気工事士も想定需要約8.6万人に対し供給が約8.3万人にとどまり、約0.3万人の不足が見込まれます。
不足の主因は、高齢の有資格者が大量に退職していく一方で、若手の入職が追いつかないことです。需要そのものが消えるのではなく、担い手が減ることで「人が足りない」状態が続くと見込まれている——これが電気工事士の将来性を支える構造です。
高齢化と2024年問題が意味すること
担い手不足は、現時点の年齢構成にも表れています。電気工事士は2022年時点で全国に約30.8万人いるとされますが、その年齢構成は高齢層に偏っています。
ここに重なるのが、建設業の「2024年問題」と呼ばれる働き方改革です。2024年4月に建設業へも時間外労働の上限規制が適用され、現在も週休2日化や長時間労働の是正が進んでいます。一人あたりの労働時間が抑えられる分、限られた人数で工事をこなす必要があり、人手不足はより意識されやすくなっています。担い手が減るなかで需要が残るため、資格と経験を持つ人材は評価されやすい環境が続くと考えられます。
再エネ・設備更新で広がる仕事
需要は「減らない」だけでなく、対象が広がっている面もあります。
- 再生可能エネルギー:太陽光発電、風力、蓄電池の設置・保守に電気工事の技能が必要
- EV充電インフラ:充電設備の設置が住宅・商業施設・公共で進む
- スマートメーター・設備更新:老朽化した電気設備の更新や、IoT・省エネ設備への切り替え需要
これらはいずれも低圧・高圧の電気工事を伴い、第二種・第一種電気工事士の活躍領域です。「AIで仕事がなくなる」という不安に対しては、現場で現物の設備に手で対応する作業が多く、短中期で丸ごと自動化される可能性は高くないと考えられます。図面作成や事務のデジタル化が進むなかで、技能と資格を持つ現場人材の価値は相対的に高まりやすいとみる見方もあります(これは公的統計そのものではなく、需要構造からの分析上の見立てです)。
長く続けやすい人・そうでない人
ただし、「業界に需要がある」ことと「自分が長く活躍できる」ことは別の問題です。需要が底堅くても、個人の続けやすさは姿勢で分かれます。
- 長く続けやすい人:第二種から第一種・電験などへ段階的に資格を積み上げる人、安全管理を徹底できる人、体力の変化に合わせて施工管理や現場監督へ役割を移せる人
- 頭打ちを感じやすい人:第二種で学びを止めてしまう人、体力勝負だけで乗り切ろうとする人、現場環境そのものが合わないまま続けてしまう人
需要があるからこそ、上位資格や管理側の役割に進んだ人ほど、年齢を重ねても選択肢を保ちやすくなります。逆に言えば、将来性を自分のものにできるかは、積み上げ方次第です。
将来を見据えた働き方の選択肢
将来性を踏まえると、現実的な選択肢は次のように整理できます。
- 上位資格でキャリアの幅を広げる → 第一種電気工事士や電気主任技術者(電験)で、扱える工事や役割を広げる。働きながら学べる通信講座を利用する方法もあります
- 再エネ・新領域の経験を積む → 太陽光やEV充電など伸びる分野の施工経験は、今後の市場価値につながる可能性があります
- 条件の良い職場へ移る → 同じ電気工事でも、会社によって給与・休日・教育体制は大きく違う。資格と経験は転職市場で評価されやすく、より長く働ける環境を選び直す手があります。建設・職人系に特化した転職エージェントもそのひとつですが、希望に合う求人が常にあるとは限らず、合わなければ断ってかまいません
将来性は「業界にある」だけでは自分のものになりません。資格と経験をどう積み上げ、どの環境で働くかで、長く活躍できるかどうかが変わります。下のカードでは、建設・職人に特化した転職エージェントを中立に比較しています。エージェントによって得意分野や求人数が違うので、複数を見比べて自分に合う相談先を選ぶ材料にしてください。
まとめ
- 需要面の将来性は底堅い。経済産業省の試算で2045年、第一種は想定需要約16.5万人に対し供給約14.1万人で2万人規模の不足、第二種も約0.3万人の不足が見込まれる
- 背景は高齢化。電気工事士は55歳以上が約34%、29歳以下は約11%(2022年時点・約30.8万人)と、退職が近い層が多く若手が少ない
- 建設業の2024年問題(2024年4月に適用された時間外労働の上限規制)による是正が続く一方、限られた人数で工事をこなす必要から人手不足はより意識されやすい。再エネ・EV充電・設備更新で仕事の対象も広がる
- ただし「需要がある」と「自分が長く活躍できる」は別。第一種・施工管理へ積み上げた人ほど、将来の選択肢を保ちやすい
よくある質問
Q. 電気工事士に将来性はありますか?
A. 需要面の将来性は底堅いと考えられます。経済産業省の試算では、2045年時点で第一種電気工事士は想定需要約16.5万人に対し供給が約14.1万人にとどまり、2万人規模の不足が見込まれています。高齢層の大量退職と若手の少なさが背景です。さらに太陽光・EV充電・設備更新などで電気工事の対象は広がっています。ただし「資格を取れば誰でも安泰」という意味ではなく、上位資格や経験を積み上げた人ほど将来の選択肢が広い職種です。
Q. 電気工事士はAIや省人化でなくなる仕事ですか?
A. 現場での配線・施工・保守は、現物の設備に人が手で対応する作業が多く、短中期で丸ごと自動化される可能性は高くないと考えられます。むしろ再生可能エネルギー設備やEV充電インフラの普及で対象設備は増えており、需要は当面底堅いとみられます。一方で、図面作成や事務はデジタル化が進むため、技能と資格を持つ現場人材の価値が相対的に高まりやすいとみる見方もあります(需要構造からの分析上の見立てです)。
Q. 電気工事士として長く続けやすいのはどんな人ですか?
A. 資格と経験を段階的に積み上げる意欲がある人、安全管理を徹底できる人、体力面の変化に合わせて施工管理など役割を移していける人です。逆に、体力勝負だけで乗り切ろうとする人や、第二種で学びを止めてしまう人は、年齢とともに頭打ちを感じやすい傾向があります。需要があること自体は、個人が長く活躍できるかとは別の問題です。
出典:経済産業省「電気保安人材の中長期的な確保に向けた検討」関連資料(産業構造審議会 電力安全小委員会)、厚生労働省(建設業の時間外労働の上限規制/2024年問題)。年齢構成・需給試算は調査・推計年により変動します。最新の値は各公式資料をご確認ください。
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