「電気工事士2種はやめとけ」——資格を取ろうと調べると、このひと言で手が止まります。簡単すぎて価値がない、取っても食えない、結局きつい。その声は本当なのか、それとも一部の人の経験から来る印象なのか。この記事では合格率や年収などのデータと現場の声をもとに、感情論ではなく数字で「やめとけ」の中身を分解します。先に言えるのは、第二種は国家資格の中では入口が広く、不満の多くは「2種で止めたとき」に向きやすいということ。だからこそ、取る前に見ておくべき分かれ目があります。
「2種はやめとけ」と言われる7つの理由
検索やSNS、口コミで挙がる「やめとけ」の理由は、おおむね次の7つに集約されます。まずは、よく挙がる声をそのまま並べます。
- 2種だけでは扱える工事が限られる:低圧(600V以下)の工事に限られ、ビルや工場の高圧設備は第一種がないと触れない
- 簡単に取れる=希少価値が低いという声:合格率が高く「誰でも取れるから差別化にならない」と言われがち
- 資格があっても現場のきつさは変わらない:暑さ・寒さ・高所・重量物といった体力負荷は資格の有無と無関係
- 年収を本気で上げるなら上位資格が要る:2種止まりだと給与レンジが頭打ちになりやすい
- 独立には実務経験と人脈も必要:資格だけで独立できるわけではない
- 受験・講習・工具に費用と時間がかかる:技能試験対策の工具・材料費もばかにならない
- 将来が漠然と不安:省人化やAIで仕事が減るのではという声
これらは実際に語られる本音です。問題は、この声が「第二種という資格すべて」を否定しているのか、それとも「2種だけで満足した場合」に偏っているのかを見極めることです。
データで見る実態:「やめとけ」はどこまで本当か
感覚的な「やめとけ」を、データで検証します。
合格率は高め=「入口が広い」資格
第二種電気工事士は、国家資格の中では合格率が高い部類です。一般財団法人電気技術者試験センターの公表値をもとにすると、学科試験(筆記・マークシート式)の合格率はおおむね6割前後、技能試験は7割前後で推移しています。受験に学歴・実務経験は不要で、技能試験は事前に公表される候補問題を練習できます。
つまり「簡単すぎる=価値がない」という評価は、裏を返せば「未経験からでも最初の一歩を踏み出しやすい」ということでもあります。住宅や店舗の電気工事は、原則として第二種電気工事士などの資格がなければ行えません(ごく軽微な工事には例外もあります)。資格そのものに需要の裏付けがある点は見落とせません。
2種だけだと年収は中位、でも需要はある
年収はどうか。電気工事士全体の平均年収は約628.1万円(厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」が令和7年賃金構造基本統計調査をもとに集計)ですが、これは経験者・上位資格者も含めた全体の平均です。第二種のみの段階では、求人・実務上の目安で350万〜450万円程度がボリュームゾーンとされます(公的統計の平均値とは別の、媒体・求人ベースの目安です)。
ここで止まると伸びにくいのは事実です。一方で第一種電気工事士の取得や施工管理への移行で600万〜800万円台に届くこともあり(これも求人・実務上の目安です)、第二種はその土台になります。需要面では、住宅・店舗の電気工事に加え、太陽光発電やEV充電設備、スマートメーターなど、低圧の工事領域も広がりつつあるとされます。「食えない資格」と言い切るのは、現状の需要から見て無理があります。
数字が示すこと
整理すると、「2種はやめとけ」は次のように分解できます。
- 合格率は高めだが、それは「価値がない」ではなく「入口が広く、需要のある資格に手が届きやすい」ということ
- 2種だけで止めると年収は中位で頭打ちになりやすい。「やめとけ」の実感はここに集中する
- きつさ・危険は資格と無関係に存在する。資格は仕事のつらさを消す道具ではない
それでも向いている人・向いていない人
「やめとけ」と感じたとき大事なのは、自分がどちらのタイプかを見極めることです。
次の問いに答えてみてください。
- 第二種を「ゴール」ではなく「最初の一歩」と捉えられるか?
- 資格を取った先で、実務経験や上位資格を積み上げる気があるか?
- 現場の体力仕事や環境そのものは、許容できそうか?
「最初の一歩/積み上げる気がある」なら、第二種を取る意味は大きいと言えます。逆に「資格だけで高収入をすぐ得たい」「配線や現場作業そのものが苦痛」なら、資格を取っても満足にはつながりにくく、別の道も含めて考える段階です。向いている人は、未経験から手に職をつけたい人、将来第一種や施工管理を見据える人。向いていない人は、現場の体力仕事や環境そのものが合わない人です。
迷ったときの次の一歩
「2種はやめとけ」への答えは、取るか取らないかの二択ではありません。むしろ大事なのは、取った後にどう活かすかです。
- 実務経験を積んで条件の良い職場へ → 第二種があれば、住宅・店舗の電気工事で実務に入れます。経験を積んだうえで、より待遇の良い会社・現場を探す選択肢があります。建設・職人系に特化した転職エージェントもそのひとつですが、希望に合う求人が常にあるとは限らず、合わなければ断ってかまいません
- 第一種・施工管理へステップアップ → 年収やできる工事の幅を広げたいなら、第一種電気工事士や施工管理が次の目標。働きながら学べる通信講座を使う人が多いです
- 適性に迷うなら別の道も → 現場作業そのものが合わないと感じるなら、無理に進める必要はありません。電気の知識を活かせる別分野もあります
どの道を選ぶにしても、第二種を「ゴール」と見るか「入口」と見るかで、評価は大きく変わります。下のカードでは、建設・職人に特化した転職エージェントを中立に比較しています。エージェントにも得意・不得意があるので、複数を見比べて自分で判断する材料にしてください。
まとめ
- 「2種はやめとけ」の声はあるが、合格率は学科で約6割・技能で約7割(電気技術者試験センター公表値ベース)と、国家資格の中では入口が広い
- 「簡単=価値がない」ではなく「未経験から需要のある資格に手が届く」。住宅・店舗の電気工事は原則として資格がないと行えず、再エネ・EV充電で活躍の場も広がりつつある
- 2種だけで止めると年収は350万〜450万円程度(求人・実務上の目安)で頭打ちになりやすい。「やめとけ」の実感はここに集中する
- 大事なのは取った後にどう活かすか。第一種・施工管理へ進むか、良い職場で経験を積むか。第二種はその土台になる
よくある質問
Q. 第二種電気工事士は「やめとけ」と言われるほど価値のない資格ですか?
A. そうとは言い切れません。学歴・実務経験が不要で、学科はマークシート式、合格率も学科で約6割・技能で約7割と国家資格の中では取りやすい部類です。取りやすい分「希少価値が低い」という声はありますが、住宅・店舗の電気工事は原則として資格がないと行えず、太陽光やEV充電など活躍の場も広がりつつあります。「2種だけで高収入」を期待すると物足りませんが、手に職をつける最初の一歩としては実用性の高い資格です。
Q. 第二種電気工事士だけだと年収は頭打ちになりますか?
A. 第二種のみで扱えるのは低圧(600V以下)の工事に限られ、求人・実務上の目安では年収350万〜450万円程度がボリュームゾーンとされます。ここで止まると伸びにくいのは事実です。一方で第一種電気工事士や施工管理へ進むと600万〜800万円台に届くこともあり、第二種はその土台になります。「頭打ち」かどうかは、2種で止めるか次の資格・役割へ進むか次第です。
Q. 「やめとけ」と言われても第二種を取る価値があるのはどんな人ですか?
A. 未経験から建設・電気の世界に入りたい人、手に職をつけて長く働きたい人、将来的に第一種や施工管理を目指す踏み台にしたい人です。逆に「資格だけで高収入をすぐ得たい」「現場の体力仕事や環境そのものが合わない」という人には、期待とのギャップが生まれやすい資格です。
出典:一般財団法人電気技術者試験センター「電気工事士試験の試験結果」、厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」。合格率・年収は調査年により変動します。資格別の年収レンジは求人・実務上の目安で、公的統計の平均値とは別です。最新の値は各公式情報をご確認ください。